当院でのアルコール依存症治療

 飲酒による問題が頻発しているにもかかわらず、お酒がやめられないのは、アルコール依存症という病気にかかっているからです。治療によってアルコールを完全に断てば健康な生活を取り戻すことができるのです。当院では次のようなことを行います。

初めて相談にきたときには
 飲酒問題で、最初の医療機関を訪ねるのは、アルコール依存症の本人ではなく、家族などの周囲の人です。ここからアルコール依存症の治療は始まります。
 周りに人が病気についてよく知り、正しい対応ができるようになるための援助をします。また、アルコール依存症の人に、治療を受ける気になってもらうために、周囲の人はどうすべきかなどについて学びます。

離脱症状の治療
 飲酒をやめると、離脱症状が出ます。睡眠薬や抗不安薬を用いて、離脱症状を軽くしたり、予防したりします。これによって比較的楽にアルコールを切ることが出来ます。

身体合併症の治療
 アルコールの臓器毒性と栄養不足によって、身体の病気が生じます。胃腸、肝臓、脳神経など、その障害はほぼ全身に及びます。その多くは、断酒と治療薬によって治すことができます。当院で難しい場合は、他科を紹介いたします。

精神療法
 アルコール依存症の回復の途上では、抑うつ、イライラ、自責や孤独感など、様々な精神的問題が生じることがあります。また、服薬をいつまで続けるか、仕事はどうするのかなど、個別に考えなければならないこともたくさんあります。個人的な問題には、外来での診察を行います。

アルコール依存症についての講義
 どんな病気でどうすれば治るかについての学習会を行います。正しい知識も基づいて正しい方法をとれば、アルコールのない生活を続けることができるのです。

回復している人たちとの交流
 アルコール依存症を、医療機関だけで克服するのは困難です。回復している人との交流も欠かせません。アルコール依存症の人の集まりには、断酒会やAA(アルコホリクス・アノニマス)があります。受診した患者さんやご家族には、通いやすい自助グループを紹介いたします。

病気になったことをどうとらえるか
 回復した人たちの中には、「病気を経験して良かった。そうでなかったら今のような充実した生活はなかったであろう」と言う人がいます。病気の苦しみの中から、そこでしか得られない知恵や洞察を得たのです。20数年にわたるアルコール依存症治療を通して、私は、このような人たちに数多く出会いました。苦しみが大きければ大きいほど、乗り越えたときに得るものも多いのです。私は、当院を訪れるすべての人に、同じ経験をして欲しいと願っています。そのためには、共に学ぶこととお互いの体験を分かち合うことが大事です。
 悩み、苦しみ、挫折は、肥沃な土壌のようなものです。そこから新しい種子が芽を出し、大きく育っていくのです。

アルコール依存症のイロハ

アルコール依存症とは?

ほどよい量で止まりません

 アルコール依存症になった人は、一杯でもアルコールを飲むと問題のない量で切り上げることができず、身体が満足するまで飲んでしまいます。これをコントロール障害と言い、いったん起こすと回復しません。上手に飲酒することは、もはやできません。全く飲まないでいるか、問題飲酒をするかの、どちらかしかないのです。

飲酒をやめると離脱症状がでます

 アルコール依存症になると、体内のアルコールが減少してくると、離脱症状が出ます。飲酒を中断して数時間経つと、手のふるえ、発汗、いらいら、不眠などが現れ、これらは飲酒するとよくなります。幻聴やてんかん発作が起こることもあります。
 飲酒をやめて2,3日目には、見えるはずのないものが見えて騒いだり、時間や場所、人物の見当がつかなくなることがあります。振戦せん妄といいます。

体の病気を起こします

 アルコールの臓器毒性と栄養失調のため、多くの病気を起こします。肝臓、心臓、すい臓、胃腸、脳、末梢神経などはよくやられる臓器です。糖尿病や貧血なども起こします。初期のうちにアルコールを断って栄養をとれば、病気の多くは完全に回復しますが、手遅れになると後遺症が残ります。

社会生活に支障が生じます

 家庭崩壊、失職、警察問題、経済的困窮など社会生活上の問題で悩まされるようになります。進行すると、職を失い、家族にも去られ、友人もいなくなります。

慢性進行性で死に至る病です

 治療しないで放置していると、長い時間をかけて、体の病気や社会問題が徐々に悪くなっていき、最後にはすべてを無くして死んでしまいます。発病してから死ぬまでに20年前後かかるのが普通です。

周囲の人も苦しみます

 アルコール依存症がどんな病気か分からないで、この病気に巻き込まれた場合には、その人たちも精神的に病んできます。効果のない対応をして疲れ果てて、不安、絶望感、アルコール依存症者に対する怒りや恨みが生じます。

治すために何をすればよいでしょうか?

専門治療を受けましょう
 初期のうちは、アルコール関連の身体疾患で内科などにかかることも多いのですが、体がよくなるとまた飲酒を始め、長い目で見るとだんだんと悪くなっていきます。これを防ぐためにはアルコール依存症の専門治療を受けることが必要です。外来治療で十分やれる場合もあれば、入院した方がよいこともあります。アルコール依存症を治せば、飲まないで健康な生活を続ける事ができます。

病気について学びましょう
 アルコール依存症について分かりやすく書かれた本を読むと、この病気を治すために必要な知識を短時間のうちに身につけることができます。自助グループに参加して、この病気を克服した人の体験談を聞くことも、大いに役立ちます。

完全に断酒すれば回復します
 すでに述べたように、飲酒に対するコントロールがきかなくなっているのですから、問題を起こさないように飲むことはできません。治すには、今後一滴のアルコールも体の中に入れないことです。これが治療の基本です。飲みさえしなければよいのだと簡単に考えがちですが、一人でこれを実行し続けることはかなり難しいことです。

AAや断酒会に行きましょう
 断酒し続けるためには、AAや断酒会に出席して、同じ目的をもった仲間と共にやって行くことが大切です。一人ではできないことでも、多くの人が力を合わせれば楽に実行することができます。
 AAとはAlcoholics Anonymous の頭文字を取ったもので、名前を名乗らないアルコール依存症者の集まりという意味です。各地でミーティングをやっています。
 断酒会は、全国各地で例会を開いています。家族も参加可能です。ほとんどの断酒会は、全日本断酒連盟に属しています。
 家族のためには、アラノンという会があります。AAと同じ回復のための12のステップを用いて、家族自身の回復を目指しています。

全日本断酒連盟
〒171-0031
東京都豊島区目白4-19-28
TEL 03-3953-0921
AA日本ゼネラルサービスオフィス
〒171-0014
東京都豊島区池袋4-17-10
TEL 03-3590-5377
FAX 03-3590-5419
アラノン・ジャパンG.S.O
〒145-0071
東京都大田区田園調布田園調布2-9-1
TEL 03-5483-3313
FAX 03-5483-3315

家族も治療に加わりましょう
 この病気になると、家族も病んできて、家族関係が悪化してきます。飲んでいる人だけを治療して、周りの家族が少しも変わらない場合は、断酒後の生活が苦渋に満ちたものとなります。
 この病気についてよく学ぶこと、家族の自助グループに参加することなどが大切です。

参考文献

「家族に贈る『回復の法則』25」
森岡洋著  ASK 1050円
「アルコール依存症を知る」
森岡洋著  ASK 1050円
「誌上アル中教室」
森岡洋著 星和書店 2400円
「よくわかるアルコール依存症」
森岡洋著  白揚社 1800円+税
「アルコール依存社会」
中本新一著  朱鷺書房 2500円+税

 以下の本はAA日本ゼネラルサービスオフィスへ
「アルコホリクス・アノニマスーアルコール中毒からの回復」
「回復への道 それぞれの場合」Ⅰ〜Ⅴ
「12のステップと12の伝統」
「アラノンで 今日1日」などのアラノンの本は、アラノン家族グループへ

Information

 
10:0012:30
14:3018:30
予約制
火曜午前・水曜・日曜・祝日 休診

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